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月兎社のモト
by calico3
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メディチ家と欧文書体。
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誰が誰のパトロンでどれが誰のパラッツォ&庭園なんだか混乱しちゃうので読んでみましたヒッバート「メディチ家」[amazon]。やっぱ歴史読み物っておもしろいなー。ロレンツォ・イル・マニフィコ(ロレンツォ・ザ・ゴォジャス!)、カコイイー!「一挙手一投足が人を魅了し、よろこびをもたらす」。そんなひとに会ってみたいものよのお。

大コジモの蒐集した書籍とその写本がルネッサンス知を動かしていくわけだけど、そのブレーン兼学友のひとりハンサムで繊細なコレクター、ニッコロ・ニッコリ(いい名前だー)の書体がイタリック体のもととなり、闊達でユーモラスなポッジオ・ブラッチォリーノが手稿筆写のために工夫した書体がローマン体の母体になったんだって。「ポッジオの書体には近代的な筆記体と印刷物の萌芽がみられる」んだそうです。

なんだけど、1450年代ロレンツォのころにドイツのマインツで活版印刷が発明されても、イタリアの貴顕・古典学者たちは印刷を「<ドイツの2,3の都市に住む野蛮人たちの間で>行われている下層階級の製法」とみなしてて、ウルビーノ公フェデリーゴを含めた多くの蒐集家は、<印刷本を持つのをはじていた>という。」だって。フィレンツェに印刷所が開かれたのはずっとくだって1477年。「印刷物」「活版活字」というとなんも考えずに文化的なもんの普及って思っちゃうけど、ヨーロッパでは「複製」に対する強烈な疑いの目っていうのがあって、このへんスタッフォードの「アートフル・サイエンス」[amazon]がむちゃくちゃおもしろいんである。なんで「複製」と「道徳」がからんじゃうのか中国文化圏のわれわれにはちょっとピンときにくいんだけど、これ読むとナルホドーなんである。いま起きてる米中著作権戦争だって、アメリカが考えてるほど単純なものじゃない。

ともあれ1500年代にはいると印刷蔑視のフィレンツェ・メディチ家出身の教皇レオ10世(ロレンツォの息子)と、自国語聖書3000部印刷をテコに宗教改革をおしすすめようというルターがガチ対決していくわけで、うーん、いろいろおもしろいなあ。

それにつけても表紙のゴッツォリ画のイル・マニフィーコの朱タイツ魅惑的。てなわけで(?)いま靴下の本をみています。
by calico3 | 2004-09-21 01:41 | 本・映画・展覧会
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